平成10年度は、研究の第一段階として、第二次大戦後ユダヤ的な素材を用いながらアメリカ的な文学を作り出して注目を浴びた、バーナード・マラマッド、ソール・ベロー、フィリップ・ロスを中心に研究を進めた。そして、すでに前期の作品について研究が終わっていたマラマッドの後期の作品と批評を読み、その成果をまとめた。これは、平成11年10月の日本アメリカ文学会で発表する。また、ベローの作品と批評も読破しており、これに基づいた研究結果を平成11年度中に発表できるよう整理している。ロスに関しては作品を読みながら、平行して文献資判収集を行っている。 これらの作家研究に加え、平成10年5月末から6月始めに来日したレイモンド・フェダーマン氏のシンポジアムや講演会に参加した。また、氏との会談で受けた示唆や、平成11年2月の東京出張の際に行った資料収集と新資料のための情報収集に基づいて、80年代以降のユダヤ系アメリカ作家、ポール・オースター、ディヴイッド・レヴイット、イーサン・ケイニン、ブレット・イーストン・エリスらの作品と批評の収集に取りかかっている。 さらに、平成10年5月の日本英文学会では、カート・ボネガットの作品を中心にした第二次大戦後の戦争作品に関する発表を行った。本研究ではアメリカ文学に対する社会の影響を重要視しており、ベトナム戦争が第二次大戦後のアメリカ文学にとのような影響を与えたかという点を論じたこの発表は、本研究にとって重要な意味があった。また、この発表を機に知り合った研究者達から、ベトナム戦争の影響やベトナム戦争を扱った様々な作品について多くのことを学んだ。現在は、ベトナム戦争以外の社会的影響を考察するため、関連資料を集めているところである。 なお、今年度の当初にコンピュータを購入してもらったが、これは広範囲に渡る多くの資料と情報の整理に活用している。
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