本年度の研究実績は次の通りである。 日本人のふりをしたアメリカ人作家ウォラス・アーウィンについての調査結果を、論稿「『日本男子』売ります!」として、論文集『物語のゆらめき』に発表した。 この論では、「人種(race)」という概念と「民族(ethnicity)」の考え方の乖離に着目し、それによって可能になった20世紀初頭のアメリカにおける異人種を排除しながら異文化を取り入れる言説としての「黄禍」について論じた。黄禍と異人種間結婚ロマンスとは、相入れないどころか、同じコインの表裏を形成することを指摘した。 調査のための基礎資料の購入に本研究費は大変有益であった。購入した書籍は都立大学図書館において公共の用に付される。また、設備備品費で購入したノート型パソコンは論文の執筆・データのとりまとめ、そして、他大学の図書館において資料を閲覧するときにデータを入力するために大変やくにたった。
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