18世紀における古詩復活の運動は古代社会における自然と人間の関わりを考え、人間本来のあるべき姿を求めた点で後のロマン派に大きな影響を与えた。当該研究はグレイを中心に古詩復活の実相を求め考察している。 まず平成10年度前半では、論文「幻想を喚ぶ北方の風-グレイ・マクファーソン・ワーズワスにおける風の描写」において、古詩研究家としてのグレイがマクファーソンの断片詩を受け取り書簡で賞賛した「六人の詩人たち」における風の描写をとりあげ、ワーズワスの詩行とのかかわりを考察した。(平成11年秋出版の関西コールリッジ研究会25周年記念論文集に掲載予定)ワーズワスの想像力を喚起する嵐の描写は本来彼の直接的な体験と観察によって生まれたと考えられてきたが、拙論では風に対する鋭敏な感性や表現方法の一端をグレイやマクファーソンから学んでいたのではないかと提言し、彼らの詩行や書簡の文面との比較考察から具体的に立証しようとした。 また今年度後半では、科学研究費によってコンピューターおよび周辺機器を購入し、研究者および本務校職員の支援を受けて、グレイの作品と書簡集の用例索引を作成する作業に取り掛かった。まず作品についてはOxford Text Archiveからテキスト入力し、修正を施して来年度にはコンコーダンスの編集作業に入る予定である。また書簡は総数約1400ページの手紙を脚注も含めてテキスト化するため、年頭の計画を超えてかなりの日数と労力が必要であることが判明した。現段階では、スキャナーで取り込むまで終了し、補助作業者とともにテキストの修正作業を続行しているが、古いつづりなどによって修正個所が多いため来年度も引き続き作業が必要である。しかしながら、例えばグレイがトムソンに言及した個所は書簡集の索引では一箇所であるのに対し、入力したテキストを試みると、脚注も含めて六箇所検索できている点からも今後のグレイの研究にとって役立つことと期待している。 全般として研究書も整備されつつあり、、コンピューターで研究環境が至便となり海外の研究者からの支援も受けられる等、補助金給付に感謝している。
|