ジョージ・A・バーミンガムの再評価のためには、(1)彼の作品そのものの研究、(2)他の作家たちとの比較研究、(3)今日のアイルランド社会における彼の作品の意義を探ることの3つが必要である。 (1)に関しては、まず、アイルランドの書店と連絡を取りながら、彼の作品でまだ未入手のものの購入に努めた。そして、7月にアイルランドのリムリック大学で行なわれた国際アイルランド文学協会大会のテーマが「1789年蜂起」だったので、この歴史的事件を描いたバーミンガムの作品The Northern Iron(1907)に関する口頭発表を行った。また12月の日本アイルランド協会年次大会では、彼のデビュー作と第2作に当たるThe Seething Pot(1905)とHyacinth(1906)を取り上げ、バーミンガムとゲーリック・リーグの関係について発表を行った。(2)に関しては、ブライアン・ムーア、バーナード・マクラヴァティー、グレン・パターソン、ロバート・マックリアム・ウィルソンといった現代北アイルランド小説家たちの作品を読みこなしていった。中でもマクラヴァティーのGrace Notesは対立社会の融和を描いて、バーミンガムの作品に共通するものがあるので学術誌The Harpのうちで紹介した。(3)に関しては、アイルランドの代表的新聞The Irish Timesと北アイルランドの政治社会批評誌The Fortnightを定期購読し、現状把握に努めた。
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