研究課題/領域番号 |
10610482
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
塚本 昌則 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 助教授 (90242081)
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研究分担者 |
福田 耕介 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 助手 (30292741)
中地 義和 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 教授 (50188942)
田村 毅 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 教授 (90011379)
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キーワード | 夢 / 詩学 / 散文詩 / 断責 / フロイト / ロマン主義 / 象徴主義 / シュルレアリスム |
研究概要 |
「夢」は、ロマン主義以降のフランス文学において、ひとつの大きな源泉をなしている。本研究は、この現象をテクスト形成の力と関係づけ、それが創作の方法にどのような影響を及ぼしているのかを検証することを目指すものである。実際、夢に現れるさまざまな要素を、神話的な次元で読み解いたり、個人の欲望に還元する研究はさかんに行われてきたが、それが書くという行為と具体的にどのように結びついているのかを検討する研究はまだ部分的にしか行われていない。今年度の研究活動においては、以下の諸点に関して成果が得られた。 1 夢を描こうとする小説には、形式そのものに「現実」を描こうとする小説とは異なった力が働いている。ネルヴァルの『オーレリア』を例に、すばやい場面転換、瞬間的な場所の移動、通常の論理とは異なった展開等々といった特色の分析を通して、夢の働きが小説の構成原理そのものに作用し、新たな形式の探求を促していることを検討した。(田村) 2 ボードレールからアンリ・ミショーにいたるまで、優れた散文詩は同時に夢の物語を構成している場合が数多くある。19世紀に新たなジャンルとして形成された散文詩は、夢の断片性を大きな糧として成立したことを明らかにした。(中地) 3 夢と詩を同一視する風潮を批判してやまなかったヴァレリーは、実際には彼なりの「夢の詩学」を実践していた。覚醒の極限を求める作家にさえ夢が大きな影響を及ぼしていることを、『カイエ』の読解を通して示した。(塚本) 4 20世紀文学において、直接「夢の詩学」を標傍しない作家においても夢は無視できない役割を果たしている。モーリャックの作品と『ブロック=ノート』との関係を分析しながらこの点を検証した。(福田)
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