プルーストと絵画に関する研究の初年度にあたる平成10年度は、 ブルースト作品の各種刊本をはじめ、コルブ編纂の『プルースト書簡集』全21巻や、私ども日本のプルースト研究会が作成した『プルースト書簡集総合索引』など、プルースト関連資料を調査し、 1 プルーストの作品と書簡に現れる「絵画」についての情報を、網羅的に集めた。 2 これと平行して、(1)の情報を、当時の絵画がおかれていた状況のなかに正確に位置づけるため、世紀末から今世紀初頭にかけての、新聞・雑誌などのマイクロ資料をあらたに収集し、調査した。 3 さらに、(1)と(2)の情報をつきあわせることによって、プルーストがいつ、いかなる機会に、どのような形で(オリジナルか、複製図版か)、画家の画と出会ったのかを特定するよう努めた。 4 さらに、パリの国立図書館が所蔵する膨大な原稿・タイプ原稿・校正刷なども調査したうえで、作家がどのような推敲過程をへて、問題の画を小説のなかに採りいれたのかを考察した。 5 以上のような経緯で小説のなかに定着した画について、それが作品のなかでどのような役割を果たしているのかについて、生成過程だけでなく、原文テキストの精読をもつうじて研究した。 6 以上の調査・考察で明らかになった研究成果を、著作『プルースト美術館』や、「研究発表」の項に記した論文に発表した。
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