平成10年度と11年度にわたり、プルースト作品をはじめ、『プルースト書簡集』や『プルースト書簡集総合索引』などに基づき、プルーストと絵画に関する研究をすすめた。 1.プルーストの作品と書簡に現れる「絵画」についてに情報を網羅的に進めた。 2.これと平行して、世紀末から今世紀初頭の絵画のおかれていた状況を知るため、当時の専門書や専門誌をはじめ、私的コレクションの実態、展覧会カタログなどを調査した。 3.さらに1と2の資料を照合して、作家がいつ、どのような形(オリジナルか複製図版か)で画家の画と出会ったかを特定した。その結果、『失われた時を求めて』に出てくるボッティチェリ、ジョット、カルパッチョ、フェルメール、モネ、モロー、エル・グレコなどの画家の受容では、当時の専門書とその図版が大きな役割を果たしたことが明らかになった。 4.それらの画を作家がどのように小説のなかに採りいれたかをパリの国立図書館が所蔵する草稿などに基いて調査した結果、作中の画家エルスチールのなかに上記実在画家の作品がモンタージュされて採りいれられた実態が解明できた。 5.さらに絵画が小説の恋愛と芸術という二大テーマを照らし出す重要な役割を果たしていることも判明した。 6.以上の調査・考察で明らかになった研究成果を、著作『プルースト美術館』をはじめ、研究発表の項に記した論文や、フランスでのプルースト・シンポジウムにおける講演として発表した。
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