17世紀フランス文学・演劇関連の資料収集にあたるとともに、モリエール劇団の演目のうちでも、とくに、劇団がパリの常設の劇場で活動を始めた1659年〜1661年についての検討を行った。この時期には、モリエールの初期の笑劇『才女気取り』と『スガナレル』が生まれているが、この二つの作品の成立条件として、劇団の演目の問題が大きく関わっていることを、実証的に論証しようとした。その結果を、国際的研究誌Le Nouveau Molieriste第3号に“Le Spectacleen mouvement dans les deux premieres comedies en un acte de Moliere:Les Precieusesridicules et Sganarelle"のタイトルで発表した。 また、日本で上演されたモリエール劇『守銭奴』についての観客の反応から、日仏文化の違いについて考察した小論を同じくLe Nouveau Molieriste第3号に“Molire au Japon"のタイトルで発表した。『流域』第45号に発表した論文「ピエール・コルネイユの復権」は、これとは逆に、現代フランスにおけるコルネイユの受容の問題を演出という手法から考察したものである。啓蒙的な書物として、モリエールの『守銭奴』の語学訳注書を大学書林から上梓した。 引き続き、研究を深めるため、平成11年3月5日〜21日まで、パリに滞在し、国立図書館での資料収集(17世紀の演劇関係の版画や、トマ・コルネイユ、ボワロベールの戯曲)に当たる一方で、パリ第4大学名誉教授ロジェ・ギシュメール氏、同大学教授ジョルジー・デュロゾワール氏、パリ12大学教授アラン・クプリ氏、トゥールーズ・ル・ミライユ大学名誉教授クリスティアシ・デルマス氏、パリ国立図書館員マリー=フランソワーズ・クリストウー氏に研究指導を受けて、大きな収穫を得ることができた。
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