4年間にわたった本研究の究極的な目的は、1989年の「ベルリンの壁崩壊」、そして90年の東西ドイツ統一に端的に現れた<世界の冷戦構造の解体>を背景に、1990年代のドイツの文化状況がどのような変化をこうむったか、知識人の発言及び発表作品に即して具体的に検証し、それを20世紀思想史の枠組みに位置づけることにあった。この4年間は、その研究のための準備段階と当初から構想されており、基礎資料の収集・整理が中心としてなされた。 本科研費配分最終年度に当たる本年度は、第一に、昨年度までに収集してきた書籍・雑誌を中心とした基礎資料の整理・ファイリング化が鋭意進められた。図書については、90年代に刊行されたものを系統的に購入できた。 第二には、コンピュータ・ネットワークを通じて、主として90年代そして2000年代に入ってからのドイツの言論状況をめぐる資料収集が行なわれた。 第三に、これまでも行なわれてきた共同研究が継続された。定例研究会が開かれた他、全国から研究者が集まるドイツ現代文学ゼミナール、オーストリア現代文学ゼミナールなどにも参加し、研究成果の検討がなされた。 第四に、科研費補助によって成り立っていた過去四年間の研究成果を論考としてまとめ、報告書を作成する作業は、現在進められている最中である。 以上のような研究状況のなかで、1)90年代文学を<戦後文学>との対比のなかで位置づける作業が一区切りつき、これを論文集のかたちでまとめる(日本独文学会研究叢書『<戦後文学>を越えて』)、2)90年代における論争史の資料を包括的に収集する、という成果を得られた。
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