1)多変量解析の手法を文体統計論に応用。柿本人麻呂について、いわゆる「略体歌、非略体歌・作歌」の間に連統的発展を仮定している従来の定説には疑問があることを指摘。またシェークスピア初期作品とみなされる『ヘンリー六世』(三部作)の第三部(および第二部)はむしろマーロー作品とみなしうることを論証。懸案の二つの帰属問題に新しい知見を示す。 2)言語年代学における基礎語彙と偶然の一致について確率論的検討および相似性係数の有意性検定を行い、言語年代学の基本的発想を再評価。またDeutsche Welleの文章長等について重回帰分析を、ゲーテの『ヴェルテル』、『親和力』と、ニコライの『ゼバルドゥス』などについて不変化詞の頻度に基く主成分分析の有効性を確認。 3)『ゲーテ・シラー往往書簡集』をテキスト・データとして、(1)文章長は対数正規分布に従うことを確認、(2)分散分析および時系列的分析の可能性を指摘、(3)不変化詞の頻度分布に基く主成分分析、判別分析等を通じて、従来の人文学的研究方法では十分な結論をえられない作者[不明]問題の解明に、これら統計学的手法が極めて有効である可能性を実証した。
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