本研究課題を申請するに当たって、「研究目的」と「研究計画・方法」に記したように、本研究遂行第2年度においては、資料の収集を継続しながら、収集した資料の分類・整理が中心的な作業となった。資料収集に関しては、平成10年度の「研究実績の概要」に記したように、さらにBadische Zeitungの1999年3月〜7月までのマイクロ・フィルムを購入した。これは、コソボ内戦との連関でNATO軍がユーゴスラビアに空爆を行った期間を含んでいる。イディオム表現を下敷きにしたカリカチュアを拾い上げるのが目的ではあるが、その場合、特定の政治的、社会的、経済的な流れに沿う方が、カリカチュアの背景が理解しやすいという考えからである。また、ユーゴスラビアの政治及びその指導者がドイツのカリカチュアでどのように描き出されているかを、NATO軍の動きと関連づけて理解することも狙いとしてある。資料としては、「研究発表(雑誌論文)」としてあげてある論文で述べていることだが、インターネットで提供されている新聞からのカリカチュアも可能な限り選択して収集することにした。ベルリンで刊行されているtaz(die tageszeitung)は有用な資料源であると判断した。 本研究課題遂行以前から収集した資料をも含めて、これまでの分類・整理に基づいて、とりあえず、本研究課題に沿った考察を行い、それを論文の形でまとめることを試みた。その一つが、西日本言語学会(1999年9月11日、於福岡市九州産業大学)における研究発表である(「イディオムカリカチュア、ウィット-ドイツ語授業における取り扱いの可能性」)。論文としては、いずれも1999年12月になるが、2つ公刊した。一つは、政治的カリカチュアを教材としたイディオム学習に関する授業展開について考察したものである。もう一つは、その考察を踏まえて、具体的な授業展開のモデルについて考え、その授業において扱われ得る資料を提供する目的の論考である。これらの発表と論文から明らかなように、カリカチュアだけでなく、ウィットをも取り込むことがイディオム学習には有用であるとの認識に至っている。 公刊した2つの論考は、本研究遂行最終年度において予定している「ドイツ語学習者のためのイディオム用例辞典」の雛形となるだろうことを意図したものでもある。また、これらの考察を基にしたドイツ語による論述を2000年9月10日〜16日オーストリア・ウィーンで開催される「国際ゲルマニスト会議」で発表する予定であり、さらにそのエッセンスをまとめた論述を"Zielsprache Deutsch"に投稿するつもりであることを付記しておく。
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