本研究課題による研究成果の一つとして、2000年9月オーストリア・ウィーン市で開催された「第10回国際ゲルマニスト会議」で「Politische Karikaturen und Witztexte als Material zum Erlernen der idiomatischen Wendungen im Unterricht Deutsch als Fremdsprache」(外国語としてのドイツ授業におけるイディオム学習のための素材としての政治的カリカチュアとウィット)と題する報告をおこなって、国際的な議論に供した(この報告は、ドイツの出版社Peter Langから2001年前半に出版される予定である)。本来のまとめは、「日本語を母語とするドイツ語学習者のためのイディオム用例集」を編集することによって、実現されるベきであろう。しかしながら、本研究課題による遂行によっても、まだ十分な蓄積はできなかった。 第二番目の成果として、これまでの研究を基にして、「ドイツ語イディオム学習・教授法に関する総合的研究-日独イディオム比較・対照研究の視点から-」と題する博士論文(400詰め原稿用紙換算1170枚、2001年2月26日広島大学大学院文学研究科提出)を書き上げた。この論文の本論第二部「ドイツ語イディオム学習・教授法に関する研究」に、本研究課題による成果の多くを注ぎ込むことになった。この博士論文を基盤にして、本来のまとめとしての「イディオム用例集」の編纂を実現させることに努力していくつもりでいる。他に公刊した論文は、「11.研究発表」に記したものである。 本研究課題によるこれまでの研究の結論としては、政治的カリカチュアは、ドイツ語学習の素材、とりわけランデスクンデを展開するための素材として、非常に利用価値の高いものである。カリカチュアの意図を真に理解することは、目標言語文化圏に関するさまざまな知識を稼働する必要がある。それは逆に言えば、カリカチュアを通して、目標言語および目標言語文化圏に関する種々の洞察を得ることができるということである。そのことは、またウィットについてもいえる。ドイツ語教材としてのウィットについても、その可能性を探求していく必要があろう。将来の研究課題である。
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