研究概要 |
本研究課題遂行初年度(平成10年度)においては、資料の収集と分類・整理が中心的な作業となった。資料収集は、ドイツの新聞、Badische Zeitung,Frankfurter Rundschauのマイクロ・フィルムを購入して、リーダー・プリンターを通して、カリカチュアとそのカリカチュアに関する記事をコピーした。また、インターネットによって、ベルリンで発行されているdie tageszeitungからも多くのカリカチュアを収集した。資料収集およびその整理・分類と平行して、それらを素材とするイディオム学習・教授法に関する考察も試みとしておこなった。その一つが「研究業績」の一番上にあげた論考である。 第2年度においても、引き続き、資料収集を継続しておこなったが、作業の中心は、イディオム学習・教授法に関する考察に移行していった。政治的カリカチュアだけでなく、ウィットをも素材とすることによって、より効果的なイディオム学習・教授が行えるものと確信する。その方向の考察の結果を論文として公刊したものが「研究業績」の第2番目、第3番目の論考である。第3番目の論考は、1999年9月11日、西日本言語学会における研究発表を基にした論考である。 研究課題遂行最終年度の目標は、まとめとしての作業である。平成5〜6年度「日独イディオム対照研究」の研究課題で交付された科学研究補助金の目標でもあったのだが、本研究課題の最終目標は、日本語を母語とするドイツ語学習者のための「イディオム用例集」を編纂することにある。しかしながら、まだまだ素材と研究が不足している、と認めざるを得ない。とりわけ、ドイツ戦後史に関する調査が未だ十分とはいえないがゆえに、将来の課題として残さざるを得ない。 報告者のこれまでのイディオムに関する研究をまとめる意味で、「ドイツ語イディオム学習・教授法に関する総合的研究-日独イディオム比較・対照研究の視点から」と題する博士論文(400字詰め原稿用紙換算1170枚)を作成した(2001年2月26日広島大学大学院文学研究科提出、3月5日審査受理)。この論文の本論第二部「ドイツ語イディオム学習・教授法に関する研究」に、本研究課題による研究成果のほとんどを注ぎ込むことになった。他に公刊した論文は、「研究業績」の最後に挙げたものである。 政治的カリカチュアは、イディオム学習のための極めて有効な素材であるとともに、学習目標言語文化圏に関する種々の洞察を得ることのできる貴重なランデスクンデの素材でもある。そのことはウィットについてもいえる。ドイツ語教材としてのウィットについても、その可能性を追求していくことが必要である。
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