研究概要 |
今年度は大阪府立図書館・京都大学図書館・東洋文庫・尊経閣文庫・国会図書館等を中心に調査を行った.筆者は1部につき28項目を調査しており、多観点からの所見が得られている.それらの所見の中で刊行部数については論文を書き、刻手については刻手名一覧表を作成中である.まず刊行部数については、刊行書の序や跋、『朝鮮王朝実録』を始めとする諸文献から得られるが、記録は極めて稀である。官版には中央官版(ソウル)と地方官版がある。中央官版は大部分が金属活字本で、大体百部ほどが一般的で、その中80部ほどは臣下に内賜される、木版本は何度もの後刷が期待される場合に用いられ、一度に数百部が刷られることもある。地方官版は大部分が木版本で、木活字も僅かにある、官版以外では木版が圧倒的に多い。しかし18世紀頃からは木活字本が増えて来る、先祖の文集を子孫が出版する場合は、2,30部から100部位のことが多いので.しばしば木活字が用いられる.刻手とは版木を彫る人のことで、版心や巻末にその名が記されている、刻手名と共に地名や刊年が記されていると、それを基準として、ある書の刻手名を手掛りにその書の刊年や刊地を特定することも可能である。このためには多くの刊年・刊地の確実な書より刻手名を蒐集しなければならない.現在17〜19世紀の約700種の書に刻された刻手名の一覧表を作製中である。又15・16世紀の刻手名一覧表も次回に予定している。従来朝鮮本には刊年が殆んどないために.版式や紙質によって刊年を推定して来たが、刻手名のある書に就いては、上記刻手名一覧表という客観的データに基き刊年・刊地の特定が可能で.現在その実現に努めている。
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