1. 文法・語彙の諸事象の分析 従来に引き続き、日本語の文法・語彙の具体的な諸事象について、新聞記事や文学作品などの電子テキストから自作のソフトウェアによって用例を検索・分析し、それに基づいて考察を行った。大規模な電子テキストを利用することで言語使用の実態に即した綿密な言語記述が可能になること、内省や少数の用例に依存した研究では見えてこない多くの興味深い事実が見えてくることを示した。 2. インターネット上の電子資料を用いた言語研究の可能性と問題点の検討 新聞記事や文学作品と異なり、インターネット上で公開されている電子テキストは口語的な要素を多く含む。これを利用すれば従来の資料では調べることのできなかった種類の事象の研究が可能になる。本研究では、語法・語形・表記などのゆれに関わるいくつかの事例を題材として、インターネット上の資料を用いた言語分析の可能性を考察した。他方、インターネット資源の利用には限界や注意を要する問題も少なくない。本研究では、インターネット上の資料を言語研究に利用する際の問題点についてもあわせて考察した。 3. 電子辞書を用いた外来語アクセントの分析 近年のコーパス言語学で利用されている電子資料はほとんどが文章の形をしたテキストデータであり、それを用いて研究されるテーマの多くは文法や語彙に関わるものである。本研究では、音韻の研究に電子資料を適用する試みとして、市販されている電子辞書から辞書データを抽出し、そこに含まれる数千語に及ぶ外来語のアクセントデータを自作ソフトウェアによって多角的に分析した。これにより、一見不規則に見える外来語アクセントの分布が原語のアクセントや分節音によって条件付けられていることを明らかにし、音韻論研究における電子資料の有効性を示した。
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