研究概要 |
本研究課題のもとで,見せかけ目的語(fake object)をとる英語の二つの構文,非能格自動詞結果構文及びWay構文を扱い,それぞれの意味表示,統語表示そして両者の結びつきについて,考察してきた。また,これと共に,研究の基盤を成す「使役の連鎖」の概念を導入した概念構造意味論のモデルの開発も推し進めてきた。 まず,理論面においては,以下の三点を明らかにした:(i)Instrument/Means/Mannerは,「使役の連鎖」の中で中間的な鎖を成し,いずれも,中間的なCAUSE関数の最初の項として表される;(ii)中間的な使役の鎖を成すInstrument/Means/Mannerが同時的に生起する時の順序は,Manner-Means-Instrumentの順である;(iii)この三者を識別するそのほかの特性は,Instrumentが非節構造であるのに対し,Mannerは節構造であり,Meansはその中間で,非節構造の場合と節構造の場合とがある。また,Mannerの節構造は状態を表すものであるのに対し,Meansの節構造は行為を表すものである。 結果構文,Way構文の考察に関しては,以下のような一般化に達した:(i)結果構文の場合は,本動詞のLCSは,全体の「使役移動」の事象構造中の手段の節構造を構成している;(ii)Way構文の場合は,全体は'make one's way PP'の概念構造を成しており,手段の読みの場合は,本動詞のLCSはその中の手段の節構造を成し,様態の読みの場合は様態の節構造を構成している;(iii)概念構造から項構造への結びつきに関しては,両構文ともに,本動詞のLCSは変項をもたないので,構文の概念構造の変項が構文の外項,内項に写像される;(iv)項構造からD-構造への結びつきに関しては,「見せかけ目的語」は動詞によって認可された項ではないので,二次的述語または経路を表す前置詞句とともに小節に結びつけられる。
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