研究概要 |
日本人英語学習者235名を被験者として弱形の人称代名詞(you, we, he, she)の聴取実験を実施した。言語資料は、200文からなる。分析対象の代名詞とそれに先行する名詞が空欄になっているディクテーションテストが実施された。その結果、代名詞の正答率は平均80%で、"you"が74%で一番低い正答率であり、"she"が89%で正答率が一番高かった。これら4つの代名詞の誤聴分析を行った結果、この実験における代名詞は、"no-pronun"以外には、他の人称代名詞と誤って知覚されており、人称代名詞以外の他の弱形と聞き誤ることがないことが観測された。さらに各音声環境における聴取正答率と誤聴分析が行われ、誤聴パターンを観測した。音声環境、Consonant clusterが聴取の困難度に大きく影響を与えている要素であることが明らかにされた。さらに日本人の聴取困難度に影響を与えている要因を詳細に観測するため、音響分析を実施した。音響要因の中で、代名詞の持続時間と正答率との相関が観測された。代名詞の持続時間が長い場合、正答率が高い傾向を示した。Assimilationの程度とvowel reductionの程度が聴取困難度に大きく影響を与えていることが分析から示唆された。 さらに短い談話を言語資料とし、日本人英語学習者と米語母語発話者の生成実験を実施し、母語話者と日本人の生成パターンの比較、検討を行った。日本人学習者においては、単語アクセントがそのまま文生成において使用されており、文アクセントにおいて、重要な差異が母語話者との比較において観察された。特に母語話者において弱形として生成されている語(冠詞、接続詞、副詞)において顕著な差異が観測された。弱形の生成がリズムパターンの収得において重要な要素であることが示された。また、談話におけるフォーカスの影響についても検討がなされ、フォーカスの要素が持続時間に与える影響が母語話者において観測された。
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