研究概要 |
平成11年度は,前年度から引き続いてインターネットおよびパソコンOCRから日英語のデータを収集すると共に,理論的研究を4つの方向で進めた。1番目は,語彙概念構造と特質構造の相互関係を明らかにするために,動詞が名詞化されたときの意味を分析し,出来事や行為を表す「デキゴト名詞」は語彙概念構造を構成する何らかの事象(event)を,具象物を表す「モノ名詞」は語彙概念構造における特定の項(argument)を各々,特質構造の形式役割として取り立てることで成立することを解明した(論文「日英語の名詞化と有界性」『人文論究』49.2;著者『形態論と意味』第7章)。2番目は,日英語の自動詞と他動詞の使役交替に関して,前著『動詞意味論』(くろしお出版」では取り上げなかった非能格動詞(run,walk,work等)の使役他動詞用法をコーパスに基づいて整理し,その意味・用法が語彙概念構造における「項のすり替え」という操作によって統一的に処理できることを提案した。(論文「自他交替の意味的メカニズム」丸田・須賀(編)『日英語の自他の交替』ひつじ書房)。3番目は英語学習者がhappen,appearのような非対格自動詞を「受身」として用いる誤用を語彙概念構造の観点から分析し,従来の受身分析に対して,完了形容詞として扱う分析を示した。(大学英語教育学会1999年度中部支部大会シンポジウム(岐阜女子大)で発表;論文「非対格性と第二言語習得:『英米文学』44.1)。4番目は,英語と日本語に中国語を加え,結果構文に見られる言語間の異同を考察し,英語と中国語の結果構文が語彙概念構造に依拠するのに対して日本語の複合動詞は異なる性質を持つことを明らかにした(国語学会平成11年度秋季大会講演(名古屋大)とフランス語学研究会シンポジウム(京都大)で発表)。
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