本研究所期の目的は、岡山県倉敷市連島所在宝嶋寺の所蔵する寂厳関連資料のうち、特に悉曇学関連の資料を全体的に再調査し、(1)その詳細目録を作成すること、(2)寂厳の著作『梵字悉曇章稽古録』刊行後に著作された批判書『不稽古録』、さらにそれに対する反批判書(仮に『反・不稽古録』と称す)を一連のものとして解明し、『反・不稽古録』の翻刻テクストを作成すること、であった。現在までの成果としては、目録作成とは別に、調査中に『不稽古録』の著者である高野山幻耳が高野山往生院谷地蔵院の第十九世寂然であることが判明したこと、平成11年9月20日〜21日の二日間にわたって宝嶋寺において公開シンポジウム「学僧寂厳とその時代」を開催したこと(朝日9.11、読売9.21、山陽10.7等に記事)を先ずあげなければならない。特に公開シンポジウムは新しい試みであったが、延200名近い聴衆を集め、学術研究の社会還元として成功したと思う。また印刷物としては、公開シンポジウム記録及びパネリストの寄稿論文を含む「研究成果報告書」及び『反・不稽古録』の翻刻(ともに5月末完成予定)も重要な成果である。寂厳悉曇学関連資料目録は電子データベース化を行なう予定であり、完了次第公開する。『稽古録』、『不稽古録』、『反・不稽古録』などの主要な資料はデジタル画像データとして記録しており、CD-ROMの形で研究者に公開する予定である。目録、画像データのデータベース化に関しては、作業が完了するまでには、なお1年ほどの期間が必要であるが、完了すれば本研究の大きな成果となろう。
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