研究概要 |
本研究は、19世紀後半から20世紀前半にかけ、日本を含むアジア各地において隆盛を極めた欧米の巡業旅芸人の実態を調査し、その全容を解明することにより、従来ほとんど等閑に付されていた西洋芸能のアジア巡業が及ぼした文化史上の意義を明らかにすることを目的としている。 平成10年度においては、研究対象を主として日本の3つの西洋劇場、すなわち横浜ゲーテ座(The Gaiety Theatre,Yokohama)、神戸体育館劇場(The Gymnasium Theatre,Kobe)、長崎パブリック・ホール(The Nagasaki Public Hall and Theatre)において上演を続けた来日旅芸人一座の活動状況を明らかにすることに努めた。その第一歩として彼等の日本での常打ち劇場であったこの3劇場の実態解明と詳細な催物リストの作成を続けた。但し、横浜ゲーテ座についてはすでに一応の成果は得られているので(『横浜ゲーテ座 -明治・大正の西洋劇場- 第2版』[岩崎博物館、1986年]参照)、神戸体育館劇場と長崎パブリック・ホールの実態解明および両劇場の催物リスト作成を中心的課題とし、そして横浜ゲーテ座との比較・対照によりそれぞれの劇場の特色、意義を解明しようとした。 本年度の主な成果は、各地に散在している明治・大正期刊行の欧字新聞、とくにThe Japan Advertiser、The Japan Chronicleなどを綿密に調査することにより、(1)『『横浜ゲーテ座 -明治・大正の西洋劇場』第3版のための新しい資料を集めたこと、(2)神戸体育館劇場の催物リスト(その一部は1995年に発表)をさらに充実させたこと、(3)長崎パブリック・ホール催物リストのための基礎カード作成に着手したことである。本研究は平成13年度までの継続課題であるので、来年度も引き続きこの調査を行う。
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