この期間は、主に中世中期のイタリアおよび中世後期のドイツ都市における訴訟法と裁判実務の研究を行なった。 (1)イタリア都市における文字文化の急速な発達とそれが独特の形で訴訟法に反映されている状況について、最近の研究をもとにして検討した。文字文化の発展の一つの重要な動因が、都市諸権力の行為の事後チェックということにあることが確認され、訴訟法における上訴制度の形成が、これと同じ歴史的文脈にあることが明らかにされた。亦、これとの関連で、これまで研究を深めてきたシチリア王国勅法集成の訴訟法における発展との類似性も明らかになり、この13世紀南イタリアに形成された特異な王国と北イタリア諸都市とにおける国制と法の発展の比較という、興味深い問題がはっきりと姿を現わした。 (2)ドイツ都市における参事会を中心とする早期的な高権的支配体制の形成とそこにおける訴訟法の発展を、イタリアとの比較において検討した。この結果、具体的な発言形態には様々な相違があるとはいえ、中世中期イタリアと中世後期のドイツの都市の間の発展の並行性について、今後さらに検討が必要であることが明らかになった。
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