研究概要 |
本年度は,まず理論的な考察として,女性差別撤廃条約との関係で女性の地位についての研究を行った。その結果,(1)機会の平等に止まらず,結果の平等を意図した積極的差別是正措置を施す必要があること,(2)そのため国家はすべての適切な政策(制裁,法令の改正または制定など)を速やかに講じなければならないこと,(3)「個人の尊厳」を犯すような私的自治の原則は許されないこと,(4)女性労働者の労働環境を改善すべきであること,(5)女性に対して不平等な扱いを招きかねない伝統や慣習には十分な注意が必要であること,などに纏めることができた(本研究代表者によるこの研究成果の概略は,国際女性の地位協会編『女性の権利』 〔岩波書店,平10〕28〜47ページに収録されている)。また,本年度は,上記の研究と並行して,佐渡島内の農村社会を対象に,営農事情とそこでの女性の働きを探るための調査を行った。具体的な対象地として,まず新穂村長畝の農業生産組合に着目し,これまで2回に亘って聞き取り調査を行った。営農に向けての女性労働者の参画事情が比較的特徴づけられるのではないかと考えたからであり,この調査作業は研究分担者(松井,関)が担当した。女性の地位は当該社会の慣行や慣習とのせめぎ合いの中で変化してきたこと,たとえば冠婚葬祭上の伝統的な風習が根強い地域では,女性に対して半人前的な扱いとする意識が少なくないこと,などの知見を得るに至った。もっとも,有閑期を狙っての調査に限られ,また晩秋から早春までの交通手段が気候的に難しいなどの事情から,農村女性の地位を探るための調査としては未だ緒に付いた状況である。農村によく見られる閉鎖性も障害の一つとなっているが,これ自体は本研究のテーマに関連していることでもあるため,次年度に予定しているアンケート調査に向けて,引き続き聞き取り調査を実施しなければならない必要性を痛感している。なお,近々,リンゴ園農家(真野町田切須)に関する聴き取り調査も予定している。
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