本研究の主たる目的は、日本中世においていかなる行為がいかなる理由で犯罪とされ、いかなる手続に基づいていかなる制裁を受けたかという問題を解明する作業の一環として、「検断得分」(犯罪処理にともなう領主の権益)の制度と実態について全面的に解明すること、および「博奕」と「性的道徳秩序を侵害する罪(強姦・姦通等)」に関する先行学説の再検討を行うことである。また同時に、中世法史に関する基本的公刊史料を素材にした犯罪・刑罰に関するキーワードのデータベース作成も重要な目的としていた。 平成10年度は、準備作業として、中世法史に関する基本的公刊史料のうち、『鎌倉遺文』、『中世法制史料集』等を素材に、犯罪、刑罰および刑事訴訟手続に関連する66のキーワードを設定し、その検索を行った。その結果、予想を上回る約1万5千件ものデータを集積できた。これは近い将来における刑事法史史料のデータベース化の骨格をなすことになろう。 平成11年度は、このキーワード検索作業を終了させ、データベース作成に着手すると同時に、研究代表者は、検索された史料群を利用した研究課題研究に着手した。 平成12年度は、「検断得分」および「博奕」に関する研究成果の公表、および検索されたキーワードに関するデータベースの完成を目標とした。その結果、研究成果報告書としてキーワードに関するデータベースを作成することができ、これによって、中世刑事法史研究の進展に少なからぬ寄与をなすことが出来たと考えている。他方、これらのデータを用いた研究論文については、諸般の事情から史料の解読作業に手間取り、平成12年度内の公表には間に合わなかった。 現在、中世の「博奕」に関する総合的分析結果をまとめた論考を執筆中であり、また、中世の「検断得分」に関する再検討作業を進めているところであるが、いずれも平成13年度内の公表を予定している。
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