本研究は、今日の環境リスクの問題には、行政による集中的なcommand and controlでは対応できない、それに対応するには、企業自身の分散的・自主的な規制が不可欠であるという認識の下、ISO14001に対して、日本企業がどのように取り組んでいるかを明らかにすることを目的とした。また、その調査を通じて、法的規制と社会の自己組織化との一般的関係について、理論的示唆を得ることも併せて目的とした。 具体的には、まず理論的検討を諸外国の文献にも当たりながら進め、他方でISO14001の認証を取得した企業約270社にアンケート調査を行い、さらに認証取得企業数社および審査登録機関にもヒアリング調査に赴いた。このように本研究は理論的研究と実証的研究を並行して行った。その成果の概要は以下の通りである。 1.ISO14001は基本的に自己モニタの仕組みを組み込むことを求めるシステム規格であり、それは組織のありように大きな影響を及ぼす。ほとんどの企業で、認証取得により、環境対策部門が強化されている。 2.法的側面に関しては、ISO14001が法的規制を抽出し、遵守する仕組みを作ることを求めているため、これまで認識もされていなかった法的規制(条例を含む)に各企業が配慮するようになった。 3.ISO14001は「継続的改善」を求めているが、しかしいったんシステムを構築した後は、システムの改善の余地は少なくなると思われる。そのため、パフォーマンス改善も視野に入れざるを得ず、その結果、コスト増が考えられるが、環境対策のコスト増については、慎重な意見が多い。 4.ISO14001の認証取得により、企業内で収益増になるか/ならないか、というコードとは別に、環境負荷を増大させるか/否かというコードが成立しつつあるように思われるが、この仮説の検討は今後の課題としたい。
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