本年度は研究初年度として、まず最初に、基本となる「子どもの人権」に関してもう一度根本的な考察をする必要を痛感したので、それに関する内外の文献を渉猟した。とりわけ、子どもの権利条約については、その成立過程における審議経過を丹念にたどるとともに、各条文の射程距離を見極めるための基礎的な検討をした。特に、同条約において中心的位置を占める「子どもの意見表明権」については、具体体的事例に則して子どもの表現の自由と関連させながら検討を加え、短い論稿にまとめた。なお、同条約に基づく第1回日本政府報告書に対して、子どもの権利委員会が行った審査とその結果出された「総括所見」についての分析と考察もあわせて行った。その中(10、32項)でも指摘されていた子どもの権利に関する独立の監視機関については、川西市の「子どもの人権オンブズパーソン条例案」をとりあげて若干の検討を行い、講演した。また、子どもの教育を受ける権利を実現するためには、「親と教師の関係を見直す」ことによって、教育のパラダイムの転換を図る必要があるとの視座に立って検討を行い、その結果を論稿にまとめた。 次に、日本弁護士連合会が現在収集・保管している「子どもの人権救済事例(同連合会が自ら扱った事例のほか、全国各地の弁護士会が扱った事例を含む)」を、同連合会の協力を得てその全ての資料を入手した。それらの各事例をいくつかの視点で分析・整理しながらパソコンに入力して、比較・検討に着手している。あわせて、社会調査の方法についての若干の文献を読んで、事例研究のあり方・方法を学んだ。次今年度は、これらの成果をもふまえて、多角的に子どもの人権侵害の救済方法の研究を進めたいと思っている。
|