今年度は問題点の発見やデータの収集に努めた。 (1) まず、広島県において起こった、いわゆるハウス・ポート事件に関連して、広島の海の管理に関する条例の運用について問題点を検討したが、代執行の適用は実際には大きな障害が発生することを認識した。 (2) また、現在とくに問題となっているプレジャーボートの係留規制に関する条例や規則づくりが盛んに行われているが、とくに広島県条例、横浜市条例、大阪府要綱、岡山県要綱、千葉県要綱を分析した。さらに、兵庫県において、現在条例の制定に向けて条例案が準備されているが、そこにおける問題点を分析した。とくに広島県は代執行で対応しているので、実際の運用が困難ではないがと思われた。この点を考慮して、兵庫県の場合には、簡易な移動措置ができるよう考慮していること、および規制ばかりでなく、施設整備も企図していることが関心をひいた。また横浜市の場合には、訴訟が提起されていることにより、問題点が存することに気づいた。 (3) さらに、現在関西国際空港第二期工事が計画されているが、そこで、空港施設に取り囲まれた閉鎖水域が発生する場合に、これを海と呼ぶことができるかどうかが議論されている。ここには海とはなにかの根本問題が存在することを認識した。 (4) さらに海に接続する河川において、水上バイクの利用が増大したりして、管理の問題が大きくなっているが、淀川や四万十川等の管理がどのように行われているのか調査した。 (5) なお今日、海岸法の改正がなされるなど、海の管理法制が大きく変わろうとしている。また地方分権推進法との関係で、機関委任事務もなくなろうとしている。海の管理に関し、地方公共団体の取り組み・仕組みが大きく変わろうとしている。次年度は、今年度の研究成果をふまえ、かつ海に関する法令の変化にも注意しつつ、問題点を理論的に整理し、成果を阪大法学に掲載する予定である。
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