今年度は昨年度においてなした問題点の発現やデータの収集に基づいて理論的分析を行った。 (1)まず、広島県において起こったハウスポート事件に関連して、広島の海の管理に関する条例について理論的に考察した。また、同条例の後に制定された「愛媛県の海を管理する条例」(平成七年)および山口県の「一般海域の利用に関する条例」(平成一〇年)の法的意義を考察した。 (2)また、現在とくに問題となっているプレジャーボートの係留規制に関する条例づくりが盛んに行われているが、とくに広島県条例の法的意義および問題点を考察した。さらに、兵庫県において、現在条例の制定に向けて条例案が準備されているが、規制と給付を織り交ぜ、かつ簡易な移動措置をも定める条例案の法的特色を考察した。しかし、平成一一年一二月の港湾審議会の答申およびそれを受けて港湾法の改正案が平成一二年二月に閣議決定され、改正法の具体的内容が明らかになってきた。改正案は、規制区域を定め、簡易な代執行を用意し、かつ罰則を強化している。兵庫県はこの新しい法律改正の動きの中で、実際には条例制定を控えているが、これらの状況を考察した。 (3)さらに、関西国際空港第二期工事により閉鎖水域が発生する場合に、これを私用水域と捉える説と、一般海域と捉える説を考察し、一般海域とする説について積極的な理論的根拠づけを試みた。 (4)なお今日、地方分権一括法が成立し、地方自治法自体も大幅に改正され、機関委任事務は廃止されるなど、海の管理法制が大きく変わろうとしている。本研究は、現在変化の真っ最中に行われたため、変化の結果を総体としてはいまだ把握できず、問題点の指摘に留まっているところが多いが、変化の方向性については呈示できたものと信じる。本研究の成果は阪大法学に掲載する予定である。
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