二年間の研究において、初年度は問題点の発見やデータの収集、次年度はそれらに基づく理論的分析を行うことができた。 (1)まず、広島県において起こったハウスポート事件に関連して、広島の海の管理に関する条例について運用の実態や理論的問題点を考察した。また、同条例の後に制定された「愛媛県の海を管理する条例」(平成七年)および山口県の「一般海域の利用に関する条例」(平成一〇年)の法的意義を考察することができたが、これらの研究成果はまだわが国では行われていないと思われる。 (2)また、現在とくに問題となっているプレジャーボートの係留規制に関する条例づくりが盛んに行われているが、とくに広島県条例の法的意義や兵庫県における条例制定に向けての答申案に基づいて、それぞれの特色を考察することができた。しかし現在港湾法の改正案が平成一二年二月に閣議決定され、改正法の具体的内容が明らかになってきた。これらの条例や条例案と港湾法改正案との比較検討はまだほとんど解明されていないと思われるので、本研究は大いに成果を上げたものと思われる。 (3)さらに、関西国際空港第二期工事により閉鎖水域が発生する場合に、これを私用水域と捉える説と一般海域と捉える説があるが、一般海域とする説について積極的な理論的根拠づけを試みた。これらの研究はあまり進んでいないので、本研究は大きな成果をあげることができたと思う。 (4)なお今日、地方分権一括法が成立し、国と地方公共団体は原則対等とされてきている中で、海の管理法制が大きく変わろうとしているとき、地方公共団体による海の管理について様々な実例を考察したが、この成果は、今後海の管理に関する地方自治権の進展に大いに貢献するものと思われる。研究成果は阪大法学に掲載の予定である。
|