研究課題
基盤研究(C)
本研究は、現代の科学技術の発展によって大規模で不可逆的な損害が発生するおそれがある現代において、科学技術の統制をどのように、どの程度まで行うべきか、その統制の根拠は何か、という「知の統制」について、人権論の立場から解明することを目的とする。そのために、以下のような研究を行った。(1)科学技術の発展とその統制科学技術・医療技術などの先端技術の発展による権侵害のおそがあり、とくに人クローン技術の統制が大きな問題となっている。科学技術の発展のためには研究の自由の保障は不可欠であるが、先端技術や生殖医療技術のもたらす未知の不可逆的な危険性のためには、制約を受けざるを得ない。その制約の根拠たる「人間の尊厳」は、概念が必ずしも明確ではないが、しかし、制約原理となりうる。ただ、規制は、科学の進展を妨げないように慎重な規制が望まれる。(2)ドイツを中心とした憲法裁判による人権保障のあり方ドイツ連邦憲法裁判所による違憲審査は、優れた憲法解釈による有用な違憲判決を数多く生み出してきている。その違憲審査制の機能と人権保障のメカニズムについて、憲法判例の分析を通じて考察した。あわせて、日本の「司法改革」に関連して、違憲審査制の不活性の現状を批判的に考察し、積極化のための提言を行った。(3)在外選挙の導入日本では在外選挙制度は1998年まで採用されていなかった。そこで、その導入を図るために、諸外国の在外選挙制度の調査と、在外選挙の不存在の憲法問題について研究した。(4) 被害者の人権当時世論の高まりをみせていた犯罪被害者の権利保障に関連して、人権論の見地から被害者の権利について考察した。
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