本研究は、平成10年10月末に採択が内定した。このため、11月より、日本の名誉毀損判例、とりわけいわゆるロス疑惑事件被告人の名誉毀損判例の収集・整理を開始するとともに、平成10年12月と平成11年2月に研究協力者との共同研究会を開催して専門知識の提供を受け、日本の名誉毀損法制が抱える問題点を整理した。 第1回の共同研究会では、奥平康弘名誉教授および弘中惇一郎弁護士から、「日本の名誉毀損法制の成立経緯と現状」について専門知識の提供を受けたうえ、その他の研究協力者との討論を通じて本研究の進め方を検討した。第2回の共同研究会では、喜田村洋一弁護士、飯田正剛弁護士、坂井眞弁護士、秋吉健次氏、山田健太氏から「日本の名誉毀損法制の現状と問題点」について専門知識の提供を受け、問題点について検討を加えるとともに、来年度に開始する比較法的分析の論点をリストアップした。この他、研究代表者は、ドイツにおける名誉毀損法制について文献資料を手がかりに最新動向の把握につとめた。 平成10年度は、ロス疑惑事件被告人の名誉毀損判例を論点ごとに整理したものの、実質的な研究期間が5ヶ月間であったため、研究課題に直接関係するテーマについて公表できるような研究成果をあげることはできなかった。来年度の研究においては、日本の判例実務において「事実主張」による名誉毀損と「意見表明」による名誉毀損がどのように区別されているかについて、表現の自由の観点から検討を加えるとともに、同様の区別はドイツやアメリカでも行われているため、比較法的視点からの本格的な研究を開始する予定である。
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