今年度の機能的行政についての研究の中では、以下のような研究実績をあげることができた。 1 従来から検討を続けてきた「私人への行政権限委任」の制度により整序される日本での「指定機関制度」の他に、現在さまざまな私人を利用した行政、本研究の意味での「機能的行政」が展開されており、その主要な類型と、今後の法的整序のための枠組みを明らかにすることができた。本年度は、特に機能的規制に重点をおいて調査した。 2 機能的行政の主要な事例として、検査・検定の分野を中心に、行政機能の民営化とそれにより惹起される、民間による行政機能の代替の法的仕組みを明らかにし、国際的な比較の素材を調査することができた。特に、EUを中心に、検査検定の基準設定を民間機関が代替する現象の増加(労働安全衛生、消費者安全、医療用具などの安全検査基準など)、基準適合性を判断する作用の民間への開放と、事業者による自己確認と適合性宣言の重視の傾向を調査することができた。特に、ドイツと日本における制度改革と議論状況を調査することができた。 3 ドイツにおける環境監査(自主的活動)の行政的利用の議論と法制度改革そしてその評価をめぐる論点を明らかにすることができた。ドイツバイエルン州での環境協定に基づく、行政規制の「代替モデル」の考え方と、それに行政規制を代替させようとする政策論とその現状を調査した。 来年度は、今年度調査した、2、3の点についての追加調査と、成果の取りまとめを行うこととしている。
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