本プロジェクトでは、行政作用の現代的な現象形態として、公私協働的な行政作用を取り上げ、その法的コントロールの手法を探求することを目的としている。 今年度は、公私協働的な行政作用の典型的な例として、技術的な安全性を規制するための基準・規格制度と、それへの適合性判断を行う検査検定制度の分野をとりあげ分析を加えた。特に、EUにおいて80年代後半から展開してきた、安全性規制の国際的整合化手法としてのニュー・アプローチ、検査検定制度を体系化、モジュール化し、民間の第三者機関を利用して適合性判断を行わせようとするグローバル・アプローチをとりあげ、その基本的な法原則を明かにし、行政法的観点からみた問題点と課題を整理した。そこでは、民間の国際的な標準化機関に技術的な細目の規範制定を委ね、その規範への適合性判断も民間の第三者機関を利用して、公私の協動的な役割分担の中で、安全性を確保しようとするものであった。 また、わが国における改革例として、EUなどによる国際的な影響のもとに同様の問題点と課題を生じさせている97年度建築基準法改正をとりあげて、そこにおける民間への建築基準法等の行政権限の開放による指定機関制度の変容(指定機関の営利法人等への開放、行政と民間権限の並行)を検討し、そこでも基準の性能規程化に伴う民間の判断機関の活用、民間の検査機関の活用がなされていることを明らかにし、そこでの行政法的な法関係(行政手続法、行政争訟の適用など)の整序を行った。
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