本プロジエクトでは、行政作用の現代的な現象形態として、公私協働的な行政作用を取り上げ、その法的コントロールの手法を探求することを目的としている。 今年度は、後者の点を特に重視し、法的紛争処理過程における問題に焦点を当てた。具体的には、消費者金融による安易な貸付から生じる多重債務者問題を取り上げ、かかる問題を処理する上において、司法機関を含めてどのような対応がなされているかを分析することを試みた。 まず第1に、金利規制との関連で、財団法人日本クレジットカウンセリング協会専務理事にインタヴューを行ない、消費者債務者への協会の対応と実態、また貸金業者の現状と通商産業省によるそれへの規制についてについて討議した。第2に、日本弁護士連合会による消費者破産免責に関する実態調査アンケート資料を入手して分析したうえ、あわせて複数の弁護士に聞き取り調査を行った。第3に、アメリカ合衆国の消費者倒産立法および消費者倒産問題に関する司法、行政の取り組みについて、シカゴ大学ロースクールのダグラス、ベアード教授にインタヴューを行った。また、ハワイ州連邦倒産裁判所判事にインタヴューを行ない、破産免責を放棄する契約についての裁判所および弁護士の取り組みに関し、討議した。最後に、東京簡易裁判所民事調停委員および司法委員との間で、消費者倒産問題に関する裁判所の関与の仕方と、民間機関による消費者倒産処理の可能性について討議した。 以上から、消費者倒産処理における裁判所の限界、それを補充する行政機関ないし民間機関への期待、その一方で、行政機関、民間機関による処理における裁判所による紛争処理モデルの有意性が明らかになった。
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