研究課題/領域番号 |
10620027
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
大沼 保昭 東京大学, 大学院・法学政治学研究科, 教授 (50009825)
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研究分担者 |
能登路 雅子 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (70164712)
渡辺 浩 東京大学, 大学院・法学政治学研究科, 教授 (10009821)
油井 大三郎 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (50062021)
新田 一郎 東京大学, 大学院・法学政治学研究科, 助教授 (40208252)
遠藤 泰生 東京大学, 大学院・総合文化研究科・附属アメリカ研究資料センター, 助教授 (50194048)
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キーワード | 国際公共性 / 文化帝国主義 / 公と私 / 多文化主義 / 国際法 |
研究概要 |
1.平成11年度は、各分担者が個別研究を遂行するとともに、「公共性」の理論的構造をより明らかにするべく、様々な分野の専門家による報告を基に討論を行った。以下、研究会における報告の概要を示す。 2.(1)花田達郎(東京大学大学院人文社会系研究科教授)は、J.ハーバーマースの著作『公共性の構造転換』を題材に、西欧近代における公共圏(「公共性」)の成立及びその変容の過程を明らかにした。 (2)寺尾美子(東京大学大学院法学政治学研究科教授)は、アメリカ合衆国の地方公共団体が「公」的性格と「私」的性格の双方を併せ持つに至った経緯の解明、及び、線的公共施設の建設整備における「公」「私」の関係の日米比較を通じて、アメリカ的な「公共性」概念と、それが依って立つ基盤との間の関係を指摘した。 (2)大沼保昭(本研究代表者)は、今日の国際法概念が近代西欧的なバイアスを持つものであるという事実を指摘する国際法学者もすでに存在するが、その指摘が未だ十分な射程を持つには至っていない、という状況をふまえて、様々な文化的背景を有する人々にとって受容可能であるような国際法概念の創出の必要性を提唱する。これは本研究の中核をなす視点であり、また、そのような視点に基づいてなされた実践的提言をなすものである。 (4)Jorg Fisch(チューリッヒ大学法学部教授)は、西暦第18世紀以降の西欧において政治・社会に関する諸概念が「動態化」(=将来における現実の変化を期待させる概念に転化)したこと、それらの概念が西欧以外の文化圏でも「普遍的」に用いられることにより、場合によって極めて重大な帰結がもたらされ得ることを指摘し、その一例として「民族の自己決定権」という、通常肯定的に捉えられている概念が国際社会そのものの破壊を招来しかねないと論じる。
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