1. 1997年ハーグにおいて「成年者保護に関する国際私法条約」の準備草案が作成された。これに基づいて1999年9月同条約がハーグ国際私法会議特別委員会(外交会議)において採択されることになっている。準備草案は、基本的には1996年にハーグで採択された「親責任及び子の保護措置に関する管轄権、準拠法、承認、執行及び協力に関する条約」に平仄を合わせる形で構成されている。スイス・ドイツ・米国とともに日本が提案した結果である。9月の外交会議においてはなお曲折が予想されるが、要保護成年者の常居所に管轄権と準拠法の(優越的な)基準を求める立場を維持したい。そのため、前回の特別委員会において連携をとったドイツなどの代表とともに事前に提案書を作成中である。 2. 本年中には、従来の禁治産制度を廃止し、これに代わる成年保護に関する制度が民法典中に新設されることになっている。これに平仄を合わせて、(禁治産などに関する)法例4条、5条、24条、25条の改正も行われなければならない。ひとまず、法例中の「禁治産宣告」という文言などを「後見開始決定」と読み替える形式的な法整備が行われることになっている。しかし、これだけでは民法に新設される「補助」制度や「任意後見」制度を国際的平面において保障するすることは不可能と考えられ、法例の関連規定の実質的な改正が必要とみられる。そのため、平成11年3月9日の法制審議会国際私法部会において、実質的改正の要否に関する検討が必要であるとの了解が得られた。筆者はその改正案を作成している。
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