本研究は平成10年度と11年度にわたるものであり、当初の計画どおりの成果をあげることができたと信じている。 平成10年度においては、平成11年10月2日にオランダのハーグにおいて採択されることになる「成年者の国際的保護に関する条約」の準備草案の検討を行った。 平成11年度においては「成年者保護条約準備草案の問題点とコメント」を作成し、法制審議会国際私法部会小委員会に提出した。小委員会の審議を踏まえ、同年9月20日より10月2日までハーグにおいて開催された"成年者保護に関する外交特別委員会"に臨み、成年後見に関する日本民法の改正を踏まえた「提案」を提出することができた。これらの提案は、1999年10月2日に採択された"成年者の国際的保護に関する条約"のいくつかの条文に反映している。とくに、日本民法に導入された任意後見制度などを考慮した諸規定は外交特別委員会において大きな論議を呼んだが、21世紀の条約として価値をもつものと思われる。条約の邦訳およびその解説は「研究成果報告書」に収録されている。以上の成果は、平成12年5月15日に開催される国際的学会において報告される。 成年後見に関する民法の改正を反映させるべく、「法例」4条、5条、24条および25条の各規定の字句が改められた。しかし、民法に導入された「補助」制度や任意後見制度は在日外国人や日本に財産を有する外国人にとって利用しにくいものとなっており、実質的な改正が必要と考えられる。平成11年度の研究ではこういった問題点の洗い出しを行った。
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