純粋持株会社の原則解禁によって生じる会社法上の問題は、(1)連結情報のディスクロージャーの充実、監督・監査体制の充実のように、純粋持株会社において特に必要性が高い事項ではあるが、株式会社一般に検討を要すべき事項、(2)従属会社における少数派株主保護や債権者保護など、純粋持株会社において顕在化する問題ではあるが、支配従属関係にある会社一般に検討を要すべき事項、(3)重要な従属会社における一定の意思決定に、純粋持株会社の株主を関与させるべきかどうかなど、純粋持株会社の登場により新たに生じる、純粋持株会社に固有の問題に整理することができる。 このような問題点の整理を基礎として、これまで(3)に属する問題を中心に検討し、純粋持株会社においては、重要な従属会社における一定の意思決定(合併、営業譲渡など)に、純粋持株会社の株主を関与させるべきではないか、また従属会社取締役の責任を追及するための代表訴訟提起権を、純粋持株会社株主にも付与すべきではないかといった、立法による解決の方向を見い出すことができた。平成11年の商法改正では、親子会社関係の創設のための新たな手続(株式交換制度)が導入されるとともに、子会社の業務内容等の開示規制の充実が図られたため、今年度は特に、同改正の内容および問題点についての検討を行った。同改正では、親子会社形成段階においても形成後の段階においても、親会社(典型的には持株会社)の株主保護のために一定の手当はなされたものの、なお不充分な点が残されていることが明らかとなった。
|