本研究は、純粋持株会社の登場により新たに生じる、純粋持株会社に固有の問題(重要な従属会社における一定の意思決定に、純粋持株会社の株主を関与させるべきかどうかなど)に主として焦点を当ててきたが、最近の商法改正で新たな企業再編の手段が導入されたことから、これらについても検討を加える必要が生じた。 今年度は、特に次の2点を中心に研究を行った。第1に、会社分割制度は、持株会社傘下にある子会杜を複数の兄弟子会社に分けたり、あるいは持株会社傘下にある複数の子会社の重複する事業部門を特定の子会社に集中させるなど、持株会社を核とした企業グループの再編成を実現するうえで、すでに実務界において重要な役割を果たしつつある。同制度について、立法論上の諸問題(承継の対象を「営業」に限ったことの是非など)、解釈論上の諸問題(「営業の承継」とは何かなど)について検討を進め、解決の方向性を見いだした。第2に、平成14年の商法改正では、会社法の全面的な見直しの一環として、連結計算書類制度の導入等が予定されている。純粋持株会社取締役を通じて、いわば間接的に従属会社の事業活動が実効的にコントロールできる仕組みを確保するためには、まず連結情報の充実が必要条件となる。持株会社取締役の職務執行が適正に行われているかどうかは、従属会杜の状況、あるいは企業グループ全体の状況を把握しなければ明らかにならないからである。今回導入が予定されている連結計算書類制度が、持株会社株主の保護のためにどのような役割を果たしうるかについて検討した。
|