本研究では、独占禁止法の改正によって持株会社が解禁され、新規の企業組織形態が利用可能となったことから、会社法制においてはどのような問題が生じたか、そしてその問題にどのように対処すべきかについて、検討を行った。 本研究期間中に商法改正が進められ、本研究で検討した会社法上対応すべき問題のうち、すでに立法により適切な対応がなされた問題も少なくない。平成11年の商法改正においては、親子会社関係創設のための新たな手続(株式交換・株式移転制度)が導入された。平成12年改正では会社分割制度が導入され、これも持株会社の創設に利用できる。これらによって、持株会社の形成段階での法規制は整備されたと言える。 平成11年の商法改正においては、子会社の業務内容等の開示規制が充実され、平成14年の商法改正においては、商法において連結計算制度が導入され、情報開示の面では、持株会社取締役の職務執行を監督是正しやすい体制が整えられつつある。 本研究は、主に次の問題について、なお立法的な手当てが必要であることを明らかにした。第1に、持株会社株主が従属会社取締役の責任を、代表訴訟により直接追及できるような仕組みを設けることである。従属会社取締役に対する違法行為差止請求権、従属会社取締役・監査役の解任請求権などの監督是正権も、持株会社の株主に付与すべきである。第2に検討すべき課題は、従属会社の意思決定にまで、純粋持株会社の株主を関与させる立法的な手当てである。
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