本年度も、前半では、主として協同組合に関する判例を素材として、中間法人における法的基本問題の抽出に努めた。すなわち、共同組合は法人であり、その対外的債務については、組合員は有限責任を負うにすぎない。しかし他方、株式会社とは異なり、組合員の脱退が認められ、持分の払い戻しが行われる。そうすると、組合員の脱退により、協同組合の財産が減少し、その債務を完済できない状況が生じうるが、他方では組合員は出資額を限度とする責任を負うのみである。この矛盾を解決するために、組合員に対する経費の賦課が認められているが、この場合の経費とは何を意味するかが問題である。これは、協同組合という法人組織の基本構造にかかわる問題として、慎重な検討を要する。その結果、協同組合の組合員脱退は、協同組合企業を維持する観点からは、重大な問題をはらむ制度であり、何らかの制限が必要であるとの結論を得た。 後半では、中間法人の役員が任務懈怠により損害を及ぼす例が少なくないことに鑑み、なぜこのような事例が生じるのか、株式会社などの営利法人と比較して何らかの構造的問題が存在するかにつき、アメリカ法における議論を参考に研究を行った。その結果、協同組合組織は、必ずしも常に株式会社のような営利法人組織に比較して、いわゆるガバナンス問題について優れた組織構造を有しているとはいえず、協同組合がその利点を発揮するには、一定の条件が必要であることが明らかとなった。
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