本研究では、非営利法人なかんづく中間法人の役員の民事責任について、とくに協同組合を素材としながら、基礎的な研究を行った。 協同組合は、その相互扶助的な活動により組合員の利益促進をはかる団体であり、非営利性、社団法人性、組合員の有限責任性などを特質とする団体である。しかしながら、第一に、協同組合の組合員は、その有限責任性にもかかわらず、自由な脱退による持分の払戻が認められており、株式会社におけるような資本不変の原則に相当する債権者保護のための制度的保障がない。このことを考慮すると、脱退における持分払戻の際の組合財産につき時価評価を認める判例の立場は問題がある。 第二に、協同組合では、組合員の有限責任にもかかわらず、他方では経費の徴収が認められており、このことは有限責任の実施的な空洞化をもたらす危険がある。判例・学説のいう出資と経費の区分はあいまいで、経費の意義は有限責任原則との関係で、再検討しなければならない。 第三に、協同組合は、株式会社に比して、構成員の数が少なく、集団的意思決定やモニタリングが効果的に行われやすい団体であるが、他方では、持分の自由譲渡性が認められていないので、コーポレート・ガバナンスが機能しにくい構造でもある。
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