金融サービス取引における民事法的規律が問題となる領域には、(1)信用仲介取引と、(2)決済取引とがある。今日、いずれの領域についても、情報通信技術の革新にともなう取引内容・取引手法のイノベーションが、広範囲に生じている。そのため、民事法的規律の再検討・再構成が、重要な課題となっている。 (1)信用仲介取引については、まず、金融商品の販売における事業者の利用者に対する説明義務の問題がある。必要な事項について、利用者に、説明をすべきである旨の義務を事業者に課すべきかいないか、その義務を民事法的に規律するならばどのような効果を与えるべきか(損害賠償責任か、契約の無効・取消・解除か)といった問題であり、その義務違反については、損害賠償責任の効果を生じさせる説明義務を定立することの必要性を明らかにした。また、集団投資スキームにおいては、そのスキームの組成・運用・管理に関与する事業者の受託者責任について、積極的に検討すべき必要性を明らかにした。 (2)決済取引については、相殺に関する民法・倒産法上の規律の内容が、差押・破産の局面では明らかではあるが、会社更正の局面では必ずしも明らかでない旨を、析出した。そのうえで、ネッティング取引についての法律関係を明確なものとし、安定したものとするための検討を行なった。
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