平成10年度は、日本の賠償責任保険に関する裁判例を収集したうえで、その問題点を分類し体系化したうえで論点を整理することが研究目的であった。その結果として、裁判例で問題となっているのは、主に賠償責任保険の免責条項の解釈が中心的なものであることが明らかになった。しかし、公表された裁判例の数はそれほど多くなく、体系的な問題点を整理するまでもなかった。この点については、実際に保険会社が抱えている賠償責任保険についての裁判の実態調査の必要性を痛感したのであるが、調査の現実にはかなり困難を伴うことが予想されるが、次年度の研究計画に取り込む予定である。 そこで、裁判例の豊富なアメリカ合衆国を参酌して、なにが賠償責任保険について問題となっているかを検討した。その検討項目である、賠償責任保険の保険事故についての請求事故型約款(Clams-made Policy)、事故発生型約款(Accident Policy)、賠償発生型約款(Occurence Policy)のそれぞれについて、判例を中心としてその問題点を検討し整理した。また、てん補規定における「事故」の意味、身体や物的損害の意味、予期または意図的な損害について、それぞれ多くの判例を分析整理したうえで学説の議論も検討した。とくに故意免責条項については、精力的に資料を収集したが、未だ整理が終了していない状況である。この問題は、本研究の中心的課題であり、継続して研究を進めたい。
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