本研究は、日本の賠償責任保険の法律上の諸問題について、アメリカ合衆国等の諸外国の賠償責任保険の判例・学説を比較検討したうえで、日本の賠償責任保険の基礎理論を体系化するのが目的である。 (1)賠償責任保険の保険事故 日本においても古くから賠償責任保険の保険事故とはなにかが争われている。しかし、今日ではそれぞれの責任任保険の種類ごとに約款で明示しており、それ自体を議論する実益はない。しかし、請求事故型約款(Claims-made Policy)の賠償責任保険においては、そのような保険契約が有効かどうかが問題である。また、事故発生型約款(Accident Policy)や賠償発生型約款(Occurrence Policy)の問題点も検討した。 (2)てん補条項 「事故」の意味は何か。身体や物的損害の意味は何か。また前述した故意免責について日本でも議論されているが、予期または意図的な損害とは何かについて検討した。 (3)免責条項 たとえば、親族間免責、従業員免責、アスベスト免責などの有効性を公序の観点から論ずる裁判例がアメリカ合衆国では多い。日本でも最近これらの免責条項について裁判で争われるようになった。そこで、賠償責任保険における免責条項の意義とその問題点を整理して検討した。 (4)個々の賠償責任保険における問題点 環境賠償責任保険、会社役員賠償責任保険、生産物賠償責任保険などの比較的新しくて社会的にも問題となった賠償責任保険について、それぞれの賠償責任保険における特有の問題を検討した。また、自動車保険についても、現代における自動車保険の役割とその法律上の問題点について、賠償責任保険の観点から検討した。
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