1 株主代表訴訟に関する従来のわが国の研究は、いずれも個々の問題の解決に終始し、体系的な視点が欠けていたきらいがあるが、本研究では、これを一つの視点、具体的には、コーポレート・ガバナンス視点から体系的に据え直した上で、その問題の解決点を見いだそうとするものである。 本年度は、まず、現在、実務上最も大きな関心を集めている社会の被告取締役側への訴訟参加・訴訟支援の問題について、会社の内部紛争解決の合理的なルールの確立といった視点から、特に訴訟支援の問題に焦点を絞って、判例・学説の整理を中心に研究を行った。 また、最近の代表訴訟に関する判例を見る限りでは、代表取締役や専務取締役らに比べて、使用人兼務取締役の責任を重く認める傾向にあるが、その妥当性には疑問を禁じえず、当事者等からのヒヤリング調査を通じて実務の現状を確認するとともに、使用人兼務取締役の意義および代表訴訟における使用人兼務取締投の責任のあり方、更には平取締役の責任の範囲について再検討を行い、現行制度が抱える問題点についても検証を行った。こうした検討を踏まえた上で、次年度は、使用人兼務取締投・平取締役の責任と代表取締役・役寸き取締役の責任のあり方・相違について新たな提言を試みる予定である。 2 わが国の代表訴訟毒制度を再構築するための準備作業の一つとして、今年度は、フランス・ベルギーにおいて、直接弁護士および株主・取締役等から、代表訴訟制度の運営状況、弊害の有無その他の問題点、および将来の展望等について、ヒヤリング調査を行うとともに、パリ大学の教授とも意見の交換を行った。特に、フランスでは、わが国とは異なり、使用人兼務取締役について、明文規定が設けられていることから、その規定の運用状況と代表訴訟との関係について、興味深い示唆を受けることができた。
|