研究概要 |
本年度は,まず労働者の個人情報の保護に関して現行法上いかなる法的保護が可能かを民法,労働法それぞれの分野に照らして細かく検討した。さらに,前年度に引き続き,労働者の個人情報保護に関して,ILOの定める行動準則,EU指令,ドイツ,フランス,イタリアの各国における法制度の内容,さらにアメリカ法の動向について検討を行ってきた。とりわけ,いかなる個人情報が法的な保護の対象となり,そのために,どのような法的仕組みが講じられているかという点に重点をおいて分析を行ってきた。 以上の検討・分析結果から,日本法においても,労働者の個人情報を明確に定義したうえで,使用者がこれらの個人情報の処理(収集,利用,開示など)を行う際には,処理の内容に応じて労働者の同意または労働者代表の関与(同意,協議,意見聴取など)を義務づけるべきであり,さらに使用者の違反行為に対しては,行為の事前抑止のために強力な制裁を与えたり,労働者側からの差止請求や除却請求などを行いやすくするなどの法的工夫が必要であるという結論を得た。 これまでの研究の成果は,若干の資料の補強や考察の補充を行ったうえで労働法の専門雑誌(季刊労働法か日本労働研究雑誌)に投稿し,さらに日本労働法学会での報告発表のためにエントリーをする予定である。
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