本研究は、平成10年度においては、(1)物流分野における競争抑制的規制の事実をトラック事業(営業区域規制、最低保有台数規制、価格変更命令権、事業遂行能力要件)、港湾運送事業(参入規制、港湾別同一料金)、内航海運業(船腹調整カルテル、航路運賃脇定カルテル、事業参入許可制、料金許可制)、鉄道事業(鉄道貨物参入規制、鉄道貨物運賃規制)、その他乗合バス事業、タクシー事業、旅客船事業ごとに客観的に確定し、また各物流関係法規の法案成立過程の資料収集を行うこと、(2)上記秩序が登場してきた政治的背景とそれらが持っている政治的意味の認識(特定の歴史的社会において、誰の、どのような権利が、誰に対して、何故、法制度として保障されたかという事実関係とそこにおける変化の法則)を究明すること、(3)維持されている物流秩序が現実の政治的諸関係の中で、国民にとってどのような意味を持つ秩序であり、また各物流法規と独禁法秩序との相互関係、あるいはその背景にある個別物流政策と独禁政策との相互関係を把握すること、であった。そして、平成11年度においては、(4)確定された社会関係において対立している緒利益につき、行政が行っている利益衡量(価値判断)の分析を行うこと、(5)一連の作業によって限界づけられた各物流法規の拘束力の範囲外の部分における法の創造、すなわち社会的規制という観点から法欠缺の充てん作業を行うこと、そして(6)研究成果の発表を行うこと、であった。全般的に計画通り研究が進められたといえる。
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