研究概要 |
1,本研究は、組織犯罪対策について、各国の最新の法制度を比較法的に検討し、組織犯罪対策における各国に共通した問題とわが国独自の問題を明らかにし、それに対処するための法的枠組みについて検討することを目的としてものである。 2,具体的な研究成果として以下のような知見を得た。組織犯罪対策には、(1)組織に焦点を当てた規制を行う必要があること、及び、(2)不法収益の規制が不可欠である。そのための立法としては、比較法的には、(1)犯罪的結社罪、(2)資金活動規制法、(3)加重処罰規定、(4)マネーロンダリング罪、(5)事業支配罪等がある。わが国では、暴力団対策法が(2)に対応しているが、その効果についてはなお慎重な検討が必要である。また、組織的犯罪処罰法は(3)ないし(5)を創設したものであるが、規定の具体的な内容の妥当性についてはなお検討が必要であり、その適用に当たっては慎重さが求められる。不法収益の規制に関して、麻薬特例法のマネーロンダリング罪は範囲が限定され、金融機関等による情報提供も活発ではなく、適用例も少なかった。しかし、組織的犯罪処罰法の制定によって、同罪の範囲が拡大され、金融監督庁に特定金融情報室が設けられたので、今後の運用が注目される。また、不法収益没収は被害者保護との関係が問題となるが、組織的犯罪処罰法の解決は望ましいものではなく、改正が検討されるべきである。さらに、組織犯罪対策については、刑事法の改正だけでは充分ではなく、組織犯罪の温床となっている民事司法制度の改革や、いわゆる「被害者なき犯罪」の改革も必要である。 3,組織犯罪対策に関する国際的な動きとしては、国連の条約案や国際刑法会議の決議案が注目される。組織犯罪対策のための国際的協力は、わが国の法制度の基本的枠組みを守りながら進めていくことが重要である。
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