刑事システムにおける情報公開に関して、平成10年度には、わが国の刑事システムにおける情報公開を中心に調査研究を実施した。 第1に、警察段階における情報公開として、警察庁の「被害者対策要綱」 (平成8年)にしたがって各都道府県警察が実施する被害者連絡制度がある。そこでは、事件担当捜査員が捜査状況、被疑者検挙の旨、被疑者の氏名・年齢等、被疑者の処分状況等について被害者に連絡している。連絡する事件の種類、内容等については、各都道府県における犯罪状況、環境条件等によって、若干の差異が見られる。 第2に、検察段階における情報公開として、1高検、42地検で実施されている(平成11年1月1日現在)被害者通知制度がある。実施日、通知対象処分、不起訴処分通知の内容、通知対象事件の罪名による限定の有無、希望確認義務の有無にはかなりの差異があるが、平成11年4月から全国統一的な被害者通知制度が実施される予定である。 第3に、裁判段階における情報公開として、少年審判に関してであるが、平成11年1月に法制審議会少年法部会でまとめられた「少年審判における事実認定手続の一層の適正化を図るための少年法の整備等に関する要綱骨子」において、「被害者等に対する少年審判の結果等の通知」が制度化された。 第4に、行刑段階における情報公開として、平成10年11月に、法務省が死刑の執行日時と件数について公表することを検討中であることが明らかにされ、その後の執行に際して、実際に公表が為された。 以上、刑事システムの各段階における情報公開は、被害者対策の一環として展開を見せているが、いずれも著に着いたばかりで、被害者の法的地位等、問題は山積している。
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