本研究課題により交付を受けた科学研究費補助金により、不足していたフランス刑事訴訟法に関する基礎的文献とヨーロッパ人権条約ならびに国際人権法一般に関する文献をかなり入手することができた。また、複写費を利用することにより前任校において公費で購入し、転任により利用できなくなっていた文献を複写することができたため、本研究の準備段階で執筆した論文の作成時とほぼ同等の資料を座右に置いて研究を続行することが可能な状況になった。現在これら資料の整理、分析を行っているところである。 さらに、日本法との比較法的研究を進展させるため、今年度はわが国の未決拘禁法に関連する文献を明治期にまで遡って収集した。これにより、明治13年の治罪法における未決拘禁が1970年代までフランス法において行われてきた未決拘禁制度とほぼ同じであり、少なくとも予審が存在した旧法までは、司法処分としての未決拘禁という考え方が、明確であったことを確認することができた。 日本の文献としては、さらにわが国で紹介されている国際人権法に関連する文献や刑事訴訟法に関連する文献も収集したので、未決拘禁が捜査のために利用されるというわが国の未決拘禁法の歪みを国際人権法の観点からどのように規制可能か、という点について考察を進める予定である。
|